第12回例会(2017.9.27)の概要 「まとめ・発表会と例会活動」

昼の部 は7名。保護者・親1名、支援者4名、室工大関係2名(学生1名)
 発表会の開催に関わっては、会場の案内をもっとていねいにする必要がある。休みの日だと、キャンパスに学生も少ないので人に聞くことも難しい、とのアンケートに記入されてしました。あるある発表については、もっと広い範囲から題材を拾い上げるようにした方が良いのではなかろうか。質疑応答では、会場からの質問が、今回の発表内容と関わっていないこともあったように感じる。でも、それは当人にとっては、切実な問題の証拠なのだと考えられる。発表会に続けて、個別の相談をメンバーが一人一人で受け持つ、というスタイルも必要になるかもしれない。でもそれには、メンバーの学習と練習が必要になるだろう。など、多くの意見が出ました。
 自分たちでも、独自のマークづくりを考えても良いのかもしれません。発達障害の場合、外からは当人の困難さが見分けにくいことがあります。困った双方を仲立ちするマークがあると、相互の理解が進むことが期待されます。会の活動は、できるだけ体系的に組むようにして、積み重ねていける内容にすべきだとの意見が出ました。次年度の課題です。

夜の部 は6名。当事者1名、保護者・親1名、支援者3名、室工大関係1名
 「ペンチとレンチ」の寸劇は良かった。来場者には行政の人が多いように感じた。身内に発達障害の人が居るとか、当事者だとかという人が多かったのかもしれない。当事者の周りに居る人にとって、具体的な対応方法まで描いた寸劇も必要なのかもしれない。既に、こうした「あるある場面の寸劇」をキャラバンとして各地で演じている団体もあるらしい。自分が受け持った相談例からも演じるべき内容がある。障害者枠での雇用現場では、障害者同士が障害種による差別に至る例も見ることがあるようだ。取り上げる内容も、吟味が必要。などの感想や意見が交わされました。
 研究発表やロールプレイは、好意的に受け入れられたようです。しかし、発表した後には何をすべきなのか、までを考えておくべきなのだと思う。まだ会として、きちんと展望をもっていない。次年度以降につなげるべき課題だ、とまとめの意見が出されました。新しい「学び」を、また考え続けていくことにします。ではまた来年、お会いしましょう。

 会の打ち上げ反省会を10/7に持つことを決め、中島町のネパールカレーのお店で開催。12名が集まり歓談しました。

「発達障害を知ろう!」あるある発表会
2017年9月17日()14:00~16:00
室工大Y棟一階Y103セミナー室にて開催
・当事者研究(1)「生きづらさを乗り越えて」
・当事者研究(2)当事者にとっての「個性と普通」を考える
・伝えたいこと(1)こんな場面でどうしましょう。あるあるロールプレイ
・伝えたいこと(2)私のおすすめ。映画・小説・すぐれものグッズ
 会場には約40名が集まり、研究発表には真剣に耳を傾け、寸劇やプレゼンには笑いもありました。コメンテーターの精神科医からは、グレーゾーンについて説明があり、最後の質問と感想では、熱心な発言やご自身の抱える相談事などからの質問もありました。アンケートも二十数通集まり、ほとんどが好意的な感想でした。次回へと続くことへの期待も書かれていました。ご参加の皆さん、お疲れ様でした。

第11回例会(2017.9.13)の概要 発表会に向けてその2「伝わりやすさを工夫する」

昼の部 は9名。当事者1名、保護者・親3名、支援者4名、室工大関係2名
 研究発表を代読でチェック。だいたい予定の時間に収まってきました。質問が出そうな点について、あらかじめ触れておくか、すぐに答えられるようにしておく準備について話し合われました。ロールプレイについては、実際に動きも付けて実演しました。当日の準備の時間にも再度確認する予定です。
 作品選びでは、候補作が多くて迷いました。全体の時間配分から発表数を調整しなければならず、頭を悩まされました。おすすめグッズでは、実物も用意され、種類なども確認しました。掲示物や印刷物、司会役などの役割分担も相談しました。だんだん当日が楽しみになる話し合いとなりました。

夜の部 は8名。当事者2名、保護者・親2名、支援者1名、室工大関係2名、取材1名
 当人による研究発表リハーサルでは、時間も話し方も完成形となりました。スライドの細かい修正などが提案されました。あるあるロールプレイは、台詞を確認しました。小道具などのついて質問が出ました。なるべく道具類は使わないが、必要だと思える物は役の人が用意することにしました。ところで、このロールプレイをする目的は何だろう、と演じる意義を考えました。知らないから、こんな出来事がある。知ることで笑い話にもできるし、対応を事前に考えられるようになる、などと幾つか意見が出ました。当日、それが試されることになります。
 他にも、全体の流れを確認したり、当日の建物の入り口の開閉なども話題になりました。いろいろと確認しておくべきことは、細かくあるようです。当日準備の集合時刻などを確認し、後はメーリングリストで検討することにしました。 

臨時の打ち合わせ会(2017.9.6)の概要

  夜の部だけで開催。7名参加。新聞の取材もありました。
 具体的な作業中心で、ロールプレイの実演と台詞の手直し、研究発表の再調整など、発表会当日を想定して取り組みました。この日までに宣伝用のちらしを印刷しておいたので、その配布場所の相談、手分けしての依頼、なども相談しました。メンバーそれぞれが自分から分担を引き受けるような雰囲気で、とても充実した話し合いになりました。

第10回例会(2017.8.23)の概要 発表会に向けてその1「私の伝えたいこと」

昼の部 は6名。保護者・親2名、支援者3名、室工大関係1名
 9月の発表会に向けた話し合い。当事者研究の概要の説明と、あるある発表のロールプレイ台本検討、おすすめグッズなど、発表内容について意見を出し合いました。エピソード披露では、身近で見聞きした例が出されました。次回には配役を決めたり、作品を選ぶことを決めました。
 グッズ紹介に関連して、お勧めの本として「自閉症は津軽弁を話さない」が話題になりました。著者の松本先生は、室工大でも先生をしていらした方で、つながり方の妙を感じさせました。次回の例会が9月13日と間が空くので、9月6日に発表会の打ち合わせ会を臨時に開くことを決めました。

夜の部 は4名。保護者・親1名、当事者1名、支援者1名、室工大関係1名
 当事者発表のリハーサルをして、発表時間や発表スタイルなどをチェックしました。時間を少し縮めて要点をしぼるように提案がありました。発表者が調整することになりました。他の、あるある発表についても台詞を試してみて、だんだんと発表会のイメージがふくらんできました。臨時の打ち合わせ会についても、確認し合いました。

第9回例会(2017.8.9)の概要 「普通とは何か。多数決なのだろか?」

昼の部 は10名。保護者・親2名、支援者5名、室工大関係3名
 最初に、テーマに関わるアンケート調査に回答してもらいました。質問1は「発達障害は個性」という言い方に違和感があるかどうか。質問2は「普通、という言葉に違和感を感じるか」。質問3は、発達障害について思うこと。例会参加者の回答集計と、当事者会での集計を比較できるようにしました。
 この調査は、札幌の当事者会に参加しているシェア会メンバーが、事前に当事者会で回答をしてもらっていた内容と比較するのが目的でした。詳しい結果や分析と考察は、9月17日のまとめ発表会で公表する予定です。大まかな内容では、シェア会での結果は、「発達障害は個性」に違和感を感じる人は少なく、「普通」に違和感を感じる人も少数でした。当事者会での結果は、「個性」に違和感を感じる人は同じように少なかったのですが、「普通」には違和感を感じる人が多くなりました。
 シェア会メンバーの回答には、「発達障害は個性」という言い方には、時に「突き放しているように感じる場合もある」とか、社会(全体)が成熟することで「障害を個性と見なせるようになる」のではないか、などの意見がありました。「普通」については、「暴力的な一方的な(押し付け)の言葉だと思うようになった、日本の普通は世界の普通とは違う、といった意見がありました。
 例会を振り返っての感想に、「こういう時間がなければ、言葉ひとつをじっくり考えなかったでしょう。答えのすぐに出ない事柄を考えて脳みそを動かすのは楽しい」と書かれたものがありました。誰かが正解を知っている、という問題ではないので、例会では誰もが悩みつつ話し合いを進めているところです。

夜の部 は5名。当事者1名、保護者・親1名、支援者1名、室工大関係2名(学生1名)
 アンケート調査を実施。昼の部の結果に加えて集計。当事者会の結果は、調査者から直接発表してもらいました。調査前には、「発達障害は個性」に対して当事者のもつ違和感は多いだろうと予測していたのに、結果は逆に違和感なく受け入れている人が多いと分かりました。「普通」については予想通りに違和感をもつという回答が多くなりました。でもシェア会での結果では、「普通」に対する違和感は少なかったので、この点にギャップについて話題になりました。
 普通に関連する言葉としては、当たり前、標準、人並みなどがあり、常識という言葉も似たように使われる場合があります。普通の対義語は、特別や特殊、超何々もあります。常識の対義語が非常識であることを考えれば、「普通はこうするでしょう」という言い方には、「あなたは非常識だ」と攻撃的な意味で伝わる可能性もあるわけです。大勢の側にあると、頓着無しに激しい言葉遣いになることがありますが、何気ない一言にも気を付けるべきなのかもしれません。
 ~「普通でしょ」とか「常識でしょ」という言葉が多くの場合、人を傷つけるということも納得しました。自分がマジョリティの側にいることをアピールするための防衛のように感じました~、という感想がありました。知ることが第一歩ですが、その知ることは結構難しいようです。

第8回例会(2017.7.26)の概要 「体験を語り合う、演じ合う、分かち合う」

昼の部 は8名。保護者・親3名、支援者4名、室工大関係1名
 家の近くで蛍が飛んでいるのに気づいた、という季節感あふれる話から始まり、近々開催予定の子ども達グループによるキャンプ補助にかける意気込み披露や、相談役として聞いた発達障害をもつ成人と家族との関係に見られる問題、前回テーマにしたトランスジェンダーの小説「トランペット」を読んだ感想や、テレビで見た男装で生きていく映画の感想など、近況報告だけでも幅広い話題で話し合うことができました。
 いのちの電話に関わっている人から聞いた話、ということでしたが、子どもから友だちと仲直りする方法を質問する電話があったといいます。子ども同士の関係づくりに、子どもが失敗できずいつも恐れている、あるいは正解があるものとしてそれを求めている、といった状況があるようです。「子供の喧嘩に親が口を出さない」という文化があったはずですが、今ではその喧嘩自体がないそうです。先回りした親や教師の規制が、トラブルを許さないとのこと。校内キャンプなども、何かあると困るから、という理由で実施されないとか。人間関係は人間同士の体験で結ばれていくはずなのですが。
 PTA活動などに、積極的に父親が参加するなどの、新しい動きについても紹介がありました。動きは色々あるようです。

夜の部 は4名。当事者1名、支援者1名、室工大関係2名(学生1名)
 NHKの番組で、発達障害をテーマにした録画を視聴。番組内で取り上げられていた、当事者の声としての「個性と我が儘の差が分からない」「障害なのか個性なのか」などについて意見交換。落ち着きの無さを例にとっても、程度が過剰だと捉えれば、それは量的な問題になる。それは、我が儘と呼ばれるが、障害としての表れ方なら質的な問題になる。その場合でも、多動症という障害と見るのかその人らしさの個性と見るのかに分かれる。当事者として子どもの頃を振り返ると、自分でも「○○すべき」と思っても、そうできなかった。それは辛い体験だった、とのことでした。
 周囲が、そういう状況をどう見てるかの眼差しが、その辛さの一因だった可能性があります。状況に合った具体的な支援方法を考えられるかどうかが、みんなの生きやすさにつながるはずです。他にも、診断の時期はいつ頃が良いのか。少しでも早い方が良いのかどか。「診断がついて楽になった」という声は実際によく耳にする言葉です。
 ABA(応用行動分析)の話も出ました。「自分が少数者になった体験談」も教えてもらいました。多様な見方をできるようになるのは、やはり日頃から多様な意見に接することが大事なようです。

第7回例会(2017.7.12)の概要 「性的マイノリティ② もっと深く LGBTを学ぶ」

昼の部 は7名。保護者・親2名、支援者3名、室工大関係2名
 前回の例会で調べたLGBTの考え方や、社会での見られ方などに加えて、新しくスライドで歴史的な視点や、生物界の例などを含めて学び合いました。今から5千年前のお墓がチェコで発見された際に、男性の骨格でありながら女性として埋葬されていたそうです。鹿児島県の種子島では、巫女たちの3世紀のお墓群に明らかに男性の埋葬が発見されています。動物にも、同性愛的な関係が広く見られることも報告されました。
 これらのことは、LGBTの現象が時代を通じ、地域や人類に偏らずに存在することを示しています。文化の問題として、宗教的に同性愛を禁止したり、犯罪と見なすようなったことの影響が大きいことが語られました。日本では明治期に西欧のキリスト教的な価値観が入ってくるまで、性別を強調する社会の仕組みはなく大らかだったようです。
 これからは、どのようなLGBTに対してどのような態度で向き合うかについては、殻を破る・型を崩す・肩を貸す、といった言葉で提案がありました。その内容については、今後も議論が必要になることでしょう。テレビ番組の録画DVDを視聴と、7/29・30に北大で開催される日本ストレスマネジメント学会の参加案内もありました。学びの機会は、いろいろあります。

夜の部 は6名。当事者1名、支援者1名、室工大関係4名(学生1名)
 昼の部と同じスライドでLGBTについて、知識を深めました。感想交流では、人に迷惑のかかることでないならどんな生き方も選べて良い・カミングアウトは勇気がいるだろう・受け入れ側に覚悟があるかどうか・言われたら引いちゃう人が多そう・学校教師の役割が大きいだろう・中学校の制服などは現実問題だ、などが出されました。性別を分けて各々に役割を課すべきだという主張もあるので、そういう人たちとの話し合いも大事なことだと考えています。 DVDによるTV番組視聴では、女性から男性への性転換(トランスジェンダー)体験者の小学校教諭の紹介もありました。生まれついてからずうっとあった自分の中の違和感を解消できた喜びと、それをすんなり受け止めてくれた子ども達に喜ぶ当人の思いを、感じさせる内容でした。性教育にも関係させて伝えるべき内容と考えられます。 
 「80カ国が同性愛を禁止していることに衝撃を受けた。高校教科書でLGBTの内容を触れているので、小中学校でも取り入れていけば、早いうちに理解できるし、『こういった人もいるんだよ』と分かるので、受け入れることになれたら良いと思う」といった感想が寄せられました。差別の助長の温床にもなり得る学校の場は、期待の場でもあります。

第6回例会(2017.6.28)の概要 「性的マイノリティ LGBTについての学び始め」

昼の部 は5名。保護者・親1名、支援者3名、室工大関係1名
 テーマのLGBTについて、参加者の一人からレポート発表。性的少数者に対する社会の変化や、現代での受け止め方などについて解説してもらえました。映画やテレビドラマにも取り上げられていることの紹介もありました。ご自身の感想として、性的少数者についてオープンに語られるという環境が、少しずつであるが整ってきているように思える、とまとめてくれました。自分で本を調べて、レジュメにまとめて、映画作品の回覧資料なども用意してくれていました。たいへんな努力に参加者一同、大いに刺激を受けました。
 続いては、用意された他の資料に沿ってLGBTについての解説を、多様な側面に光を当てて進めました。テレビ放送などでの「おねえキャラ」などは、ゲイを身近な存在だと広めたことは確かですが、番組内で固定化された役割(例えば「いじられ役」とか)しか与えられずに、その範囲を超えるような発言などは嫌われる傾向があるようです。性転換で男性から女性になったタレントが、「使いにくくなった」と番組製作者側から言われたりする現状があるとのことです。視聴者も、決まり切ったような見方でしか、LGBTの登場人物を見ている可能性があるようです。
 性別による社会的な役割の固定化やその押し付けは、じつは男性性の強迫的な実現だという主張から、女性装(性的な対象は関係なしで)をする大学教授の話題も出ました。メンバーからの意見では、宝塚歌劇などにも男性性の理想が感じられるとか、発達障害とLGBTの関係への関心などが出て、身近な行事の案内などもされました。

夜の部 は11名。当事者2名、保護者・親2名、支援者2名、室工大関係4名(学生2名)、取材1名
 昼の部で発表されたレポートの要約、その後に資料の解説。札幌市のパートナーシップ宣誓制度の紹介もしました。精神科治療の専門機関誌から、研究対象としてのLGBTについても動向を説明。参加者からは、同性愛などは昔からあったのか、世界的に普遍的なのか、生物として考えた際に不都合はないのか、などの点に関心がもったと意見が出されました。これらの疑問は、即答が無理なので、次回のテーマとして調べたことを持ち寄ることにしました。
 身近な話として、知り合いと話していた途中で「息子がゲイだ」と告げられたとの体験談が語られました。広告会社の大規模な調査によると、7.8%ぐらいの割合でLGBTの人がいるとの集計結果があるようです。けっして、遠くの話ではないことが理解できました。社会にある「両親そろって家庭は成り立つ」ギリシャの彫像に見られる「男性美」などは、作られた意識なのでは、との話も出ました。その極端な例は、ナチスによる同性愛社の抹殺だとの話にもなりました。
 学生の感想に「~性的少数者も、そうでない人も、納得のいく上手い仕組みや世の中の意識になっていけばいいな、と思っています」とありました。支援者の一人は、「(性的少数者の人権擁護ばかりではなく)その考えに反対する立場の人(同性愛者は認められない)がいたら、もっと深い話し合いになったのでは、と思いました」との感想を残してくれています。次回の例会で、再度意見を交流させていきましょう。

第5回例会(2017.6.14)の概要 「発達障害③ LDにとっての学びやすさを考える」

昼の部 は6名。保護者・親2名、支援者3名、室工大関係1名
 前回から三週間ぶりと間が空いたので、近況についてまずは語り合いました。小学生のお子さんが運動会を無事に乗り越えられたことを、親として喜んだとの感想がありました。いつもと違った雰囲気の中で、子ども自身が過剰に反応してしまうことはありがちですが、学校全体が盛り上がると個々の子どもの様子に目が行き届かなくこともありそうです。教育テレビの番組で、支援学級と交流学級とのていねいな関係づくりを取り上げていたので、現実との落差が気になったとのことでした。
 LGBTの本を読み、その内容を報告してくれた人からは、法律家などによる説明で社会生活の多くの場面で問題に直面させられる人々がいると話題提供がありました。このテーマには、次の例会で一緒に考えてみる予定です。他にも、発達障害当事者の本から、「親の考え方(子どもの育て方)」に興味を持った話や、夏に予定のあるキャンプを当事者の子ども達と計画している話などを教えてもらえました。
 例会のテーマである学習障害(限局性学習症)LDについては、当事者による講演内容やスライド、反転文字の音読、動画などで、読字障害(ディスレクシア)の困り感を体験的に理解しました。LDの人は、他の人読みにくい文字を苦労しながら読んでいる、と思っていることがあるのですが、そのことについて、「自分自身も片方の目が子どもの頃弱視で、小学校に入るまで人間は皆左目が悪いと思い込んでいた」と自身の体験を感想に書いてくれていました。周囲の理解があるかどうかで、子どもの学びは大きく影響を受けます。理解し行動することの大事さを認識し直しました。

夜の部 は8名。当事者1名、保護者・親3名、支援者1名、室工大関係3名(学生1名)
 近況報告では、子ども時代から知っている今は青年が仲間と一緒に自宅を訪ねて来るが、うれしくもあり心配もありという心情を語ってくれたり、子どもがリレー選手に選ばれなかったことを自分で喜んでいたという当人の複雑な感情、長距離ハイクを歩き通した高校生たちのサポート体験で子ども達の頑張りを実感した話、就活での成果、教育実習を手配する際の困難さ、発達障害を治すという本の紹介、情報を聞き取って対処する困難さなど、多様な話題が取り上げられました。
 LDについての体験的理解は、書き取りの難しさを取り上げました。逆転反転した文字を、見えた通りに書き写すことをしましたが、制限時間があったとしたら到底書き切れないと実感させられました。授業の場合なら、当人は内容の理解はできたのに、その結果を表現することにつまずいている場合もある。しかし、先生の方が気づくことがなければ、当人の理解不充分とされる。いくつか複数の方法で、理解の程度を知る工夫が必要となると、体験的に理解しました。
 「聞く部分が苦手な自分にとって、人の話を聞いて理解する人ってすごいなぁと、ただただ感嘆していたように思う。でも自分にも得意な分野があって、それを生かすようになれればいいかな、なんて思う」との感想が寄せられました。学びの体験から、前向きな思いにつなげてくれていました。学びの原点は共同だと、実感させてくれます。

第4回例会(2017.5.24)の概要 「発達障害②AD/HDの困り感を疑似体験する」

昼の部 は7名。保護者・親3名、支援者3名、室工大関係1名
 簡単な自己紹介の後に、5月24日にNHKの特集番組として放送された「発達障害スペシャル」について、参加者相互で感想を述べ合いました。番組では、ASD当事者から聞き取った感覚過敏の様子を映像化したり、体験談として取り上げていました。光がまぶしく感じられる例や、冷蔵庫のモーター音などが気になる例などが紹介されましたが、個人差も大きいと説明されていました。スタジオに当事者の2名の方が出演して、自身の体験をまじえて解説していました。
 感想としては、周囲の環境をどのように整えるかについて、社会の側に余裕が必要だと思うが現実には難しいことが多いなど、発達障害に対する関心が高まって来ても、具体的な対応では動きが乏しいことが話題になりました。番組づくりは一年間つづくようなので、継続して注目していくことにします。
 AD/HDの困り感を擬似的に体験する動画を視聴し、対応方法についても動画の例から考えました。不注意というのが、ぼんやりしているというよりも、あらゆる刺激に注意が向けられてしまう状態であることを体験し、そこから重要な情報だけを抜き出すことの難しさを話し合いました。子どもさんの学級の例が、感想文につぎのように書かれていました。多動が目立つクラスメートがいた際に、「先生がクラスにある絵や本棚など必要のないものを、ほとんど片付けたりして殺風景な教室と思っていましたが、その子にとっては必要な事だったとわかりました」とのことです。学び合いの機会は大事だと感じました。

夜の部 は9名。当事者2名、保護者2名、支援者1名、室工大関係4名(学生3名)
 NHKの番組について、放送内容そのもの以外にもネットニュースなどの話題も含めて感想を述べ合いました。「普通」という言葉が何度も出て来たのですが、それが意味している内容が当事者や周囲の人で、ずれている可能性があるかもしれない、との意見が出ました。同じように「個性」という言葉も、どこまでが個性でどこからが「障害」になるのか、あまり考えないで使われている気がする、という意見も出ました。当事者として考えたら、あまり言われたくないのではないかとか、個性と言って現状を表現するのは親だけかもしれない、などという感想も述べられました。
 ネットニュースには、「自分は発達障害だとカミングアウトしたら翌日から子ども扱いされた」という体験談が載っていました。障害があるなら弱者と見なしてしまう社会一般の傾向がうかがえます。世話をする-世話をされる、という関係を固定化してしまうと、とくにそうした上下の関係が生まれる可能性がありそうで、問題点だと議論になりました。
 AD/HD理解のための疑似体験や、対応方法の動画を視聴した後の感想では、ブロークンレコードテクニックなどの方法は相手によって効果が違う、という体験例が語られました。トークンを用いた動機付けも、「やらない理由」として機能する場合もあるとのことでした。また学生の一人からは、情報の受け取り方で視覚と聴覚で優位になる感覚が人によって違うことの影響も論じられました。多くの異なった見方から論じ合うことで、今後も理解を深めていけると実感できました。
 次の第5回例会では、学習障害LDについて考える予定です。

第3回例会(2017.5.10)の概要 「発達障害①自閉症スペクトラムという考え方」

昼の部 は6名。当事者1名、保護者・親3名、支援者1名、室工大関係1名
 参加者からの情報提供で、映画と本の紹介がありました。映画はドキュメンタリー作品で、自閉症の子どもが言葉を再獲得する過程でディズニーアニメが重要な役割を果たしたという内容です。2016年公開の「ぼくと魔法の言葉たち」についてでした。本は、発達障害の人に限定されるわけではなく、誰にでも便利に利用できる工夫された日用品を紹介する内容でした。解けにくい靴ひも・音がしにくい椅子カバー・言葉を返す人形などを例に説明してもらえました。
 前回の例会で特別支援教育が話題になったことで、室蘭市での取り組みを知りたいと市の教育委員会に聞きに行った体験を報告してもらえました。担当の二名の職員から資料なども示してもらいながら、詳しく説明を聞くことができたとのことでした。特別支援学校や学級への入学や進級については、幾つかの段階をもつ会議で検討され、そこでは保護者の考えが尊重されていると説明されたそうです。メンバーによる、こうした自主的な活動などが、今後も増えていくことが期待されます。
 予定のテーマであった自閉症については、スライドや動画を見て理解を深めました。保護者の方から、「世の中が自閉症・発達障害について理解しようとしている勢いをすごく感じています。私は、わが子には色々試して生活して生活しています」との感想が寄せられました。親御さん同士での情報交換も、活発になっているとのことでした。

夜の部 は7名。当事者1名、保護者・親2名、支援者1名、室工大関係3名(学生1名)
 昼の部に紹介のあった映画とお役立ち品について、夜の部でもお伝えしました。「自閉症スペクトラム」という捉え方の新しさや、当事者がもつ独特な感覚や考え方などについて、スライド・動画を通して再確認しました。「最近どう?」と聞かれた時の戸惑いが、動画の中で当事者の言葉として語られていました。そうした曖昧な言葉に関連した実例として、職場で仕事の優先順位をつけられない、突発的な仕事や指示内容の急な変更などに対応できない、といった体験談(当事者としても同僚としても)などが話題になりました。
 小さい頃から手放さないバスタオルや毛布があって、それが無いと落ち着けないとか、家で来客に応対する時の自分の身なりに迷う、などの身近な問題とからめて自閉の傾向は誰にも見受けられる点も話題になりました。幾つかの作業を並行して処理する難しさがある一方で、一つの作業を仕上げる際の完成度の高さなどを考えると、当人に合った作業手順を用意できるかどうかがポイントになりそうです。周囲のみんなで、各自が力を発揮できるような環境づくりに関心をもつことが大事だと話し合われました。 
 次の第4回例会では、AD/HD(注意欠陥・多動性障害)の困り感に迫ってみる予定です。

第2回例会(2017.4.26)の概要

昼の部 は8名。保護者・親2名、支援者4名、室工大関係2名
 東田直樹さんの本を読んで大いに考えさせられた、という支援者の方からの話題提供がありました。東田さんは、自閉症の当事者として積極的に自分の思いを本に書いています。その本では、非常に論理的に話が展開されていて、納得させられた、と感想を語ってくれました。そして、身近で接する発達障害の子どもたちにも、きちんと論理的に説明することで各種の問題を事前に回避できたり、影響を小さくできそうに思う、と実際面での活用についても、意見表明がありました。
 この場合の問題には、例えば思春期の男女関係なども含まれます。当事者と周囲の子ども達の間のことだけでなく、子どもと支援者や指導者との間にも注意すべき点があると、体験例からの助言もありました。あいまいな注意の仕方ではなく、「50cm以上離れましょう」などの具体性をもった説明が有効なようです。
 引きこもりの状態なども含めて、問題をかかえた家族などでは外部との接点が必要になる、との話も出ました。子どもに発達障害があったりすると家族にも似たような傾向がみられる場合もあり、家族の中で議論されても堂々巡りになる可能性があります。場合によっては議論にさえならずに、強く発言する人の一言で全てが決められる例もあるようです。そこに外部の視点が入り込む機会がなければ、多様な対応の可能性が狭められてしまうことになります。ご近所のお節介おばさんや、物知りおじさんなどの存在意義は、それなりに認められそうです。これらは、介護に関わる80-50問題について考える際にも、必要な視点だとの指摘もありました。他にも、当事者・支援者と一般社会をつなぐ「通訳」の存在も議論されました。

夜の部 は10名。当事者2名、保護者2名、支援者3名、室工大関係3名(学生1名)
 今後の例会の持ち方について提案が発表されました。スライドにまとめられた内容を、全員で見ながら検討しました。提案内容は、①発達障害について学ぶ、②体験談などの交流、③生きづらさへの多様な視点、④資料収集と検討、⑤他にもある生きづらさを知る、でした。大枠として、このような流れで進めていくことが確認されました。
 発達障害当事者(この場合はAD/HD)が、自分の弱点カバーのために工夫したことを動画で発表しているので、その例を視聴しました。忘れ物対策として、型抜きをしたボードを自作した内容でした。当事者に限らず、誰にとっても有効な方法だと考えられるので、実行可能場面で試してみる価値はありそうでした。
 続けて、アメリカの教育番組として歴史のあるセサミストリートに、今回自閉症の少女がメンバーとなった動画を視聴しました。ジュリアとの初対面で戸惑うビッグバードに、周りの登場人物がジュリアらしさを語っていきます。ジュリアは時間を掛けて反応するよ、という助言を受け止めたことで、ビッグバードは安心できたようです。日本でも似たような番組がほしいです。
 他にも、「就学指導」の実際面や就労支援についての実情、言葉を引き出すためのスマホツールの例など、各種の情報提供もありました。次回は、発達障害について理解を深めるために自閉症を取り上げる予定です。

第1回例会(2017.4.12)の概要

昼の部 は6名。保護者・親2名、支援者3名、室工大関係1名
 初参加の方が人数の半分だったので、最初のあいさつ・自己紹介をていねいにしました。今現在も、子どもの就学について困難さを抱えている、という保護者としての悩みが語られた際には、かつて似たような状況にあった親としての思いをまじえてご自身の体験談が語られたりしました。
 家庭内で子どもについて気づくこと、感じること、とは違う環境の、例えば学校外での子ども同士の活動を見守る立場からのご意見などからは、家庭と学校といった二つの見方の差をつなぐような新たな気づきが得られそうでした。また、学校で身に付けたことが、それだけで完結せずに社会生活にもつながっていく必要性を、就労支援の現場からの視点で語ってもらえました。発達障害をもつ当人の自立には、その自立のイメージがもっと具体的に描かれる必要性があるようです。
 最近の小学生で、とくに高学年女子の子ども同士の会話が、ずいぶん大人びて来ていて、それについて行けない子が孤立感を深めているようだ、という説明もありました。SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などの影響があるのかもしれません。今後も話題に取り上げていきたいテーマです。

夜の部 は9名。当事者3名、保護者1名、支援者1名、室工大関係4名(学生2名)
 参加者はお互いに以前どこかで出会ったことのある顔ぶれだったので、さっそく最近の関心事などを話題にして意見交換しました。それらの話し合いから、今年度の活動方針に結びつくヒントが得られそうでした。
 発達障害として診断されたのがリタイヤの時期だった、という当事者の方は、自分としての発達障害理解のための学習は一段落がついたので、これからは障害の枠を広げて、社会にある生活しづらさの具体例を調べてみるつもりだ、と教えてくれました。例えば公共的な場にある多目的トイレを調べて、各所の良い点や問題点などを比較している、とのことでした。何らかの形での発表が待たれます。
 学生からの発言では、家で障害について話し合った際に、各自で障害というものに対するイメージが異なっているような印象をもった、という内容がありました。このことから、例えば聴覚障害の人が具体的にどのように周囲や世界を認識しているのか、関心をもったとのことで、そのような学びの場があると良い、と提案しました。これに対しては、言語聴覚障害支援の専門家である人から、当事者との橋渡しができないわけではない、といった意見が出ました。いろいろな場面で体験したことを、本人の言葉で直接知る機会が大事だろう、という助言もありました。
 例会のテーマや方向性や、活動のまとめの発表形式などについては、次回の例会でも話し合う予定です。昼の部と夜の部で、簡単な人間関係づくりワークもしました。「私」は案外「自分」を知らないことに気づかされました。

 

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